介護医療院とは

平成30年4月より創設されることとなった「介護医療院」は、長期的な医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者を対象とし、 「日常的な医学管理」や「看取りやターミナルケア」等の医療機能と「生活施設」としての機能とを兼ね備えた施設です。

介護医療院ができた背景

介護医療院という制度ができるまでには、紆余曲折がありました。
介護医療院がどのようにできたのか、これまでの高齢者医療の流れを見てみましょう。

病院に長期入院している高齢の患者のうち、「家族での介護が難しく、やむなく入院させている状態」、いわゆる「社会的入院」が問題視されました。

病院から「社会的入院」をなくすため、まず1993年、第二次医療法改正により療養型病床群が創設されました。
療養型病床群とは、長期入院による医療提供の必要な患者が入る施設です。
その後、2000年に介護保険制度がスタートし、介護療養型医療施設が創設されます。

さらに2001年には療養型病床群が療養病床に再編されます。
療養病床は、医療の必要性に応じて「医療療養病床」と「介護療養病床」の2つに分けられました。
医療の必要性が低ければ「介護療養病床」で患者を看てほしいという意向があったのですが、この2つを調査してみると、「ほとんど差がない」という結果になっていました。
これでは2つに分けた意味がありません。

この結果を受けて、「医療は医療機関で、介護は介護施設で」と区分する方針が決定、介護療養病床は廃止する方向性に。
2006年、その受け皿として転換先の介護療養型老健が創設されました。

厚生労働省は、介護療養病床に対して介護療養型老健への転換をすすめていましたが、実際はなかなか転換が進みませんでした。
そのため、介護療養病床は2012年度末で廃止予定となっていたのですが、2023年度末までに廃止と延長されます。

これを受けて、介護療養病床の次の受け皿として2018年に創設されたのが、介護医療院なのです。

介護医療院にはどのような人が入れるのか

 介護サービスは、65歳以上もしくは40歳以上で特定疾患などがあり、要介護認定を受けている人のみが受けられるものです。要介護認定とは、介護の必要量を全国一律基準に基づき、客観的に判定する仕組みのことです。一般的な医療サービスのように、自己判断では介護サービスは受けられません。

 また、介護医療院は「重篤な身体疾患を有する方や身体合併症を有する認知症高齢者の方等に長期療養等を行う」ことを目的としているため、要支援1、要支援2の高齢者が利用することはできません。

 また、要介護1~5と判定されても必ず入居できるというものではなく、要介護度が高いほど介護医療院への報酬は高く、入居を受け入れられやすいと考えられます4)

 さらに、2018年4月の介護報酬改定により、認知症の人への対応や、低栄養リスクの改善に対しての加算が新たに設けられたことからも、認知症である、低栄養リスクが高い、その他にも排泄支援を受ける必要があるなど「加算」の対象となる人から入居できると考えられます。

介護医療院利用に対するおおよその費用

 介護医療院を利用する場合の費用は、施設サービス費のほかに居住費・食費・日常生活費などがかかります。施設サービス費は要介護度や施設形態、居室の種類、職員の人数などで異なります。利用者の負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得がある場合は2割または3割を負担します。

 表2はⅠ型、表3はⅡ型の介護医療院の施設サービス費用の目安です。利用者の要介護度等に応じた施設サービス費と、利用者の状態に応じたサービス提供による加算・減算、施設の種類・体制等によるサービス提供体制強化加算、介護職員の処遇改善加算(現行加算・特定加算)が加わり、自己負担額が異なる場合があります。実際に必要となる費用は、施設によって異なる部分がありますので、各施設に直接問合せる必要があります。

表2:Ⅰ型介護医療院サービス費(Ⅰ)の1日あたりのサービス費(利用者負担1割)
要介護度 従来型個室 多床室 ユニット型個室・ユニット型個室的多床室
要介護1 714円 825円 842円
要介護2 824円 934円 951円
要介護3 1,060円 1,171円 1,188円
要介護4 1,161円 1,271円 1,288円
要介護5 1,251円 1,362円 1,379円
表3:Ⅱ型介護医療院サービス費(Ⅰ)の1日あたりのサービス費(利用者負担1割)
要介護度 従来型個室 多床室 ユニット型個室・ユニット型個室的多床室
要介護1 669円 779円 841円
要介護2 764円 875円 942円
要介護3 972円 1,082円 1,162円
要介護4 1,059円 1,170円 1,255円
要介護5 1,138円 1,249円 1,340円